top of page

素早い運動においても左半球が機能的優位性を有していることを示唆

“言語機能における左半球”や“視空間認知機能における右半球”のように,左右の大脳半球には機能的優位性があることが明らかになっています.運動制御機能については,これまでスマートフォンを操作するような系列的で連続した運動(sequential movements)に関しては,左半球の機能的優位性を示す報告がありましたが,危険を察知して反応するような素早い運動(rapid movements)については,詳細は不明でした.今回,茨城県立医療大学付属病院リハビリテーション部 石橋清成氏,茨城県立医療大学医科学センター 石井大典助教,河野豊教授らのグループは,経頭蓋磁気刺激(TMS)と脳波(EEG)を組み合わせた手法を用い,素早い運動中の左右の大脳半球間の接続性を調べました.その結果,左半球の一次運動野(M1)は,右半球のM1を強く抑制しており,左半球は素早い運動においても機能的優位性を有している可能性が示されました.この研究成果は,Journal of Motor Behavior誌 (Asymmetry of Interhemispheric Connectivity during Rapid Movements of Right and Left Hands: A TMS-EEG Study) に掲載されています.

 

研究概要


我々が日常的に行う運動には,スマートフォンを操作するような系列的で連続した運動(sequential movements)の他に,運転中危険を察知して反応するような素早い運動(rapid movements)があります.我々は,素早い運動における大脳半球間の機能的優位性を明らかにするため,経頭蓋磁気刺激(TMS)と脳波(EEG)を組み合わせた手法を用い,左右の大脳半球間の接続性を調べました.


方法

右利きの健常成人を対象に,安静時および,右または左の素早い示指の運動時における半球間の接続性を評価しました.半球間の接続性の指標には,脳へのTMS後に脳波によって得られ,対側半球への抑制過程を反映する半球間信号伝播(ISP)を用いました.


結果

右示指による素早い運動時の左半球→右半球へのISPは,左示指による素早い運動時の右半球→左半球へのISPよりも高いことがわかった.一方,安静時においては,これらのISPに有意差を認めなかった.


結論

左右の素早い示指の運動時のISPの比較より,左半球の一次運動野(M1)は右半球のM1を強く抑制していることが明らかになり,連続的な動きだけでなく素早い動きにおいても,左半球が機能的優位性を有していることが示唆されました.脳卒中後のリハビリテーションにおいて,左半球損傷患者と右半球損傷患者では,運動麻痺の改善に関わる機序が異なっており,適切なリハビリテーション介入が異なる可能性が考えられます.



【掲載論文】

Ishibashi K, Ishii D, Yamamoto S, Okamoto Y, Wakatabi M, Kohno Y.

 

問い合わせ先

茨城県立医療大学付属病院 リハビリテーション部 理学療法科

石橋清成(イシバシ キヨシゲ)

TEL:029-888-9201

E-Mail:ishibashik.jpn@gmail.com


bottom of page