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遠藤 理学療法士の研究成果が論文として公開されました!

本研究室の遠藤さん(当時博士前期課程)の研究成果が論文として公開されました.


【背景】

肩関節痛は,筋骨格系障害の中で腰痛・膝痛に次いで多く,その発生原因としては肩関節を安定させる役割をもつ回旋筋腱板の損傷(腱板損傷)が最も多いと言われています.腱板損傷による肩関節痛や機能障害は,動作能力の低下を引き起こし,患者さんのQOLを低下させてしまいます.現状の腱板損傷に対する治療は,関節や筋などの局所にのみに行われていますが,その効果は限定的で,患者さんの三分の一以上が治療後も慢性的な疼痛を示すため,問題とされています.近年では,この疼痛の慢性化に中枢神経系の興奮性低下が関与していると報告されており,治療が奏功しない一因であると考えられていいます.そのため,疼痛の慢性化に対する治療として,患部だけでなく,中枢神経系の変化に着目することが重要であると考えられます.これまでに神経筋電気刺激(NMES)が,中枢神経系の興奮性を増大させることが多数報告されています.しかし,これらの報告は手指筋などを対象としたもので, 他の筋と異なる性質を持つ腱板筋において同様な効果が得られるかは不明でした.


【目的:一番知りたいこと】

棘下筋に対するNMESが皮質脊髄路興奮性に及ぼす影響について,健常人を対象に調べ,腱板損傷患者への治療応用の可能性について考察すること.


【結果】

棘下筋に対するNMESによって,棘下筋のMEP振幅(皮質脊髄路の興奮性)は有意に増大しました.NMESを実施していない上腕二頭筋の指標には介入前後で変化がみられませんでした.棘下筋に対するNMESの効果は,NMESを与えた筋にのみ選択的に生じました.


【まとめ】

本研究の結果,NMESを行った棘下筋のみ皮質脊髄路の興奮性が増大し,その変化は脊髄以上の中枢神経系で起きている可能性が示唆されました.棘下筋に対するNMESが,皮質脊髄路興奮性の増大を惹起するという現象を利用して,腱板損傷患者の治療に応用できる可能性があると考えられます.


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